2004年、秋。
デジタルカメラを片手に、明治神宮外苑のイチョウ並木を訪れた日のことを今もよく覚えています。
黄金色に染まった道路の両側のイチョウ。普段は車が行き交う道の真ん中が歩行者天国となっていて、広々とした通りいっぱいに人々があふれていました。
歩道では、家族連れやカップルがゆっくりと歩いていく光景は、都会の真ん中とは思えない開放感に満ちていました。初めて訪れた私は、その人出の多さと賑やかさに驚きつつも、思わずカメラを構えました。
それでも今のように、誰もが写真を撮るわけではありませんでした。カメラを手にしていたのは観光客や一部の愛好家だったと思います。多くの人はただ立ち止まって見上げ、目の前の風景を心に刻むようにしていました。まだスマートフォンが普及する前の時代、並木道は「記録する場所」ではなく「その場を味わう場所」だったのです。








カメラメーカー:OLYMPUS CORPORATION
カメラの機種:u15D
撮影年月:2004年11月
イチョウ並木の歴史
明治神宮外苑のイチョウ並木は、大正末期から昭和初期にかけて整備されました。約300メートルにわたり整然と植えられた146本のイチョウは、正面にそびえる聖徳記念絵画館へと続く参道のような役割を担っています。
都市と自然が調和したこの風景は、東京の秋の象徴として長く人々に愛され続けています。
参考サイト
なぜ人々が集まるのか
多くの人がこの並木道を訪れる理由は、単に紅葉が美しいからではありません。
都心の真ん中で、車道すら人々のために開放され、黄金色のトンネルを歩けるという特別な時間。落ち葉を踏みしめる音や木漏れ日の温もりが、訪れる人一人ひとりの記憶に刻まれます。2004年当時は、今よりも「その瞬間を生で味わう」ことが大切にされていたのかもしれません。
再開発と未来
近年、この一帯は再開発計画の対象となり、神宮球場やラグビー場の建て替え、緑地整備の議論が進んでいます。象徴的な 4列のいちょう並木は伐採せずに保全されることが公式に明示されており(参考:神宮外苑まちづくり公式サイト)、さらに緑化率の拡大や樹木本数の増加も計画されています。現行計画では、樹木の総数は 1904本から2304本へ、緑化率は約25%から約30%へと増加する予定です(参考:三井不動産ニュースリリース 2024年7月5日)。
また、設計の見直しによって、新球場とイチョウ並木の距離は従来の約8メートルから18メートルに拡大され、伐採数も大幅に削減されました(参考:TOKYO MX 報道記事 2024年9月10日)。根系保護や土壌改良など、樹木医による具体的な保全策も取り入れられており(参考:東京都都市整備局ファクトシート)、再開発は単なる建て替えではなく「景観の継承」を重視した取り組みとして進んでいます。
参考サイト一覧
TOKYO MX 報道記事(2024年9月10日)
https://s.mxtv.jp/tokyomxplus/mx/article/202409101020/detail/
神宮外苑まちづくり公式サイト
https://www.jingugaienmachidukuri.jp/planning/
三井不動産ニュースリリース(2024年7月5日発表 PDF)
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2024/0705/download/20240705.pdf
東京都都市整備局「神宮外苑地区再開発に関するファクトシート」
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/toshiseibi/pdf_bosai_toshi_saisei_data_jinguu_factsheet03
終わりに
2004年の写真を眺めると、当時の自分の記憶だけでなく、東京という街の移り変わりも鮮やかによみがえります。
イチョウ並木は、単なる観光名所ではなく、時代ごとに人々の思いを刻み込んできた「都市の記憶」そのもの。これから先も残り続け、未来の人々に同じ感動を与えてほしいと願っています。